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きらめく午後に包まれて

 のんびりゆっくりすべりゆく

オールを持つ手もぶきっちょに

 えっちらおっちら漕いでゆく

小さな漕ぎ手と水先が

 ふらふらゆらゆら連れてゆく

 

こんなにすてきなお天気に

 意地悪三()が声あげる

こんなにひ弱な息なのに

 お話してよと声あげる

こんなに小さな声ゆえに

 舌べら三つに音をあげる

 

はじめはこわーい女王様

「始めなさい」とのご命令

次にはやさしいお姫様

「おかしな話」とご要望

最後はやかましお嬢様

 どこそこかまわずご発言

 

ふいに沈黙うち勝って

 空想の中を追いかける

夢の子供のめぐるのは

 見たこともない変な国

鳥やけものとおしゃべりし

 とりこになってしまう国

 

やがてお話くみつくし

 夢の泉がかれはてる

つかれた声は苦しげに

 つづきは今度と言うけれど

元気な声は楽しげに

 今が今度と言い返す

 

ゆっくりゆっくりふくらんだ

 フシギの国の物語

なんとかかんとかこしらえて

 今やすっかり店じまい

陽気な一行かじを切り

 夕日のもとを帰りゆく

 

アリスよどうぞ受けとって

 このあどけないお話を

子供の頃の夢にまぜ

 記憶の糸にからませて

彼方で摘まれた巡礼の

 しおれた花の輪のように

 

 

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